無題

 

初めて 女性アイドルを好きになった。

 

クソレズの風上にも置けないような発言だが 本当に初めてだった。女子感の強い女の子より、ボーイッシュな女の子のが好きだったせいもあるが いかにもアイドルな仕草や 猫を被った振る舞いが何より苦手だったのだ。

アイドルは 自分の身なりやサービスでファンを獲得し、利益を得る職業だから それで間違っていないし幸せになっているファンも沢山居るのだから、アイドルとしてはそれがあるべき姿であり、正しい姿なのだと思う。

 

でも私が好きになったアイドルはそうじゃなかった。

 

大勢の前で話すのが苦手で、バラエティ番組に出ても上の空。しかし彼女の空気感やテンポは 中毒性があり それだけを求めて唯一彼女が出演している深夜番組に齧り付くファンも多かった。

 

笑顔も苦手だったように思う。

彼女が気まぐれでSNSに載せる写真も ギロりとこちらを睨みつけるような写真や 目をかっ開いて見下すような写真が多く 笑顔が見られるカットは少ない。

しかし、ライブの特典会で会いに行くと 笑っている彼女が見られた。自分の手元のチェキに写る彼女もぎこちなくはあるが 笑っている。少しでもこちらに気持ちを添わせてくれるのが分かって嬉しかった。

 

歌声も、アイドルと言うよりロッカーだった。

音源こそまともに歌っているものの、ライブ中の間奏はシャウトを繰り返し 迷わず客席にダイブした。揉みくちゃにされながら、必死に大事に一曲一曲を歌い上げていた。

 

たった6時間しか 今日が彼女がアイドルとして最後の日なんだと 意識する事が出来なかったのが悔しい。もっと前から知れていたら きっと迫り来る今日に向けて 心の整理を付けられたのかもしれない。

自分がこんなにも衝撃を受けるなんて思わなかった。彼女が自分を構築する 神経を保つ一部になっているって気付かなかった。

アイドルを辞めた彼女は、もうきっとファンや大衆を前にしたイベントには 出てこないと思う。そういう機会があったとしても、それはアイドルの彼女ではなく モデルやタレント枠に入った彼女だ。

 

世間が求めるようなアイドル像では無かったと思う。

誰もが口を揃えて好きだと言うようなアイドルでは無かったとも思う。

目に見えるようなファンサービスも、リップサービスも無かったと思う。

 

それでも私の中では唯一無二のアイドルであり、それはこれからも変わらない。

最高のアイドルだった、沢山の可愛いと歌声と思い出をありがとう。

 

めちゃくちゃに好きだよ、これからも