第弐話 見知る、天井

 

 

社畜に夢の4連休が訪れた。

 

上司に そろそろ振休取るか と言われた時、私は余程気持ち悪いニヤけた顔で頷いていたのだろう。上司から憐れみとも優しさとも取れる表現しがたい眼差しを向けられたのを記憶している。

 

まあ突然の休みに 私が誘える友達は少なく、全てを予定で埋め尽くす事は不可能だったが、おかげで初日は連勤続きでゴミ屋敷と化した我が家の大掃除が捗った。コインランドリーにも行けたし、後輩から有難く頂いた洗濯槽クリーナーの出番も訪れ、そろそろ必要になるであろう加湿器も部屋の隅から発掘する事が出来た。明日の朝は水周りを頑張ろうと思う。元々鬼が住むような汚部屋だった所から「まあ(人間の)一人暮らしならこんなもんだろ」という所までレベルアップ出来たので良しとしよう。

鬼という表現は鬼滅の刃にハマってしまった私の単純さから察して欲しい。伊之助が愛おしくて堪りません。会社辞めて鬼殺隊に入りゴミみたいなこの命を捧げたいです。

 

部屋の様子は精神の余裕に直結してる。連勤続きで帰っていた時は「風呂に入って眠れさえすればいい」と思っていたので自分の家に目を向ける余裕が全くなかったのだが、四連休が確定した日の夜 家の状態をまじまじと見て 掃除をする必要がある、と固く決心できた。

 

マジで汚部屋だった。牛小屋のがマシなんじゃないかレベルの汚部屋だった。母さんが冬用の布団を持ってくる(という名目で東京に来て息抜きしたい)という善意を全力で阻止してしまう程、誰かを家に招き入れられる状態ではなかった。身内ですら見せられない。足の踏み場が文字通りなかったのだ。床に散乱した服とゴミの山、飲みかけのペットボトル、次の日着れるものがあればいいと溜めてしまっていた洗濯物、テレビ台の埃、ストレスだろうか学生の頃より格段に増えた抜け毛。それらを全て一掃し、やっと私の部屋が帰ってきたという気持ち。

 

私の部屋は風呂トイレキッチンを含めた8畳のワンルームなので、実質生活区域は6畳にも満たない。実家の自分の部屋よりも狭い。だけど帰って風呂に入って眠るだけならそれで充分だと今の部屋を借りた。無駄に部屋が広いと掃除も大変だからな…

 

そんな自分の家だが、好きな部分が一つだけある。

 

それは天井だ。

f:id:om1o3:20191025000727j:image

 

え?どういうこと?となられても仕方ない。

何が良いのと言われれば具体的な事は言えないのだが、部屋の構造を考えさせられる謎の出っ張りと直角加減が なんか好き。

 

天井は自分が眠りにつく前に見る最後の景色だ。だからその部分を好きでいられるこの家に私はちょっと愛着を持っている。部屋で喫煙しないのは天井を汚さない為だったりもするくらいには、この天井を愛してしまっている。(気持ち悪!)

 

変なこだわりかもしれないが、前の家も天井が好きだった。

教室の無機質な天井は凄く苦手なのに、自分の家の白い天井を見ていると心が休まるのは何故だろう。

 

家の契約もそろそろ切れる。

更新するかしないかはまだ決めていないけど、もし引っ越すとしても 私は天井に執着するだろう。

 

おやすみ、天井。